第9回日本ラブストーリー大賞 1次選考あと一歩の作品(18)

『パンティーライアー』/みひと 

 あらすじ&コメント

「大丈夫かな、って不安に思いながら信号を渡ろうとすると、無意識に体が動かなくなってるんだよね。結局青から赤に変わるのを目の奥でじっと見たまんま。(中略)ためらいが心の中にあると勢いが弱まって間に合うはずのものも間に合わなくなる。悩むことに時間を費やすくらいならとりあえずやってみたらいい」、このセリフは、物語の中盤の手前で、惹かれ合っていながら近づけない登場人物の心象を明かしたもので、こうしたハッとさせられるセリフを書く言葉のセンスに驚いた。しかし、そのような顕微鏡的な視点を離れ、望遠鏡的な視点で物語を俯瞰すると、この作品は小説として破綻していることが明らかになってしまう。場面とか、物語というものがないに等しいのだ。次作では、ぜひ最初に面白いストーリーを構築し、そこに言葉を流し込む作業をしてほしい。この作者の言葉のセンスがあれば大傑作が生まれると思う。

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